夏が好きだ。もう一年中夏だったらいいくらいに、夏が好きだ。なんて言うと「情緒がないなぁ」と胡桃は呆れるんだけどさ。
「夏休み何する⁉ どこ行く⁉」
両手を勢いよく突き上げれば、アイスキャンディの滴がキラリと舞う。すでに学んでいる胡桃は、被害を免れるためにサッと拓実の後ろに隠れた。
終業式を終えた僕らは、四人並んでいつもの海沿いを歩いていた。前回の夏、僕はこの日、この場所で、莉桜と胡桃を傷つけた。それをずっと、後悔することになるとも知らずに。
嫌な記憶がみぞおちあたりまで押しあがり、僕はぶんぶんと頭を振った。
「あれはもう、なくなった過去だ」
誰にも聞こえないよう、僕は自分に言い聞かせる。あれはもう、僕の中にだけ残っている過去の出来事だ。
状況は変わった。もう二度と、同じことを繰り返したりはしない。いや、そういうことにはならないだろう。
「本当に葉は、夏大好き!って感じだよね」
無邪気に笑う胡桃の、夏服の襟がさわやかに揺れた。
四人で一緒に夏の海を前にアイスキャンディを食べる。これが当たり前なんかじゃないってこと。神様がくれたチャンスによって取り戻した夏なんだってことを、僕だけが知っている。だからこそ僕は、この夏を一生に残るものにしようと思っていたのだ。
「胡桃、今日何時に待ち合わせする?」
「授業始まるのが五時だから、十五分前くらいに着けばいいかなあ」
しかし、自然と繰り広げられる女子ふたりの会話に、僕は思わず首をかしげた。
授業? 五時に始まる?
「胡桃も、莉桜と同じ予備校に入ったんだっけ」
女子ふたりの会話に拓実が加わる。夏の強い日差しが、僕の心をジリジリと焼き付け焦がす。
高校三年生の夏休み。それは、受験生の夏休みとも言い換えることができる。たしかに最近は学校でもやたらと、進路についての話が出ているとは思っていた。だけどそのことが、僕の楽しみにしていた時間を奪うことになるとは。
「勉強漬けの夏休みかぁ」
がっくりと肩を落とす僕の背中を、胡桃がとんとんと軽く叩く。
「夏祭りは行けるし。それに受験が終われば、ぱぁーっとみんなで遊べるよ」
胡桃の言葉に、僕は気持ちを切り替えるように空を見上げた。入道雲がもくもくと立ち上る夏の空は、どんなときでも僕の好きな色をしている。
いつまでもうじうじしているのは僕らしくない。なによりも前へ進もうと頑張っている仲間の背中を押すのが僕の役目だ。
「莉桜は今でも成績優秀なのに、やっぱり受験って本当に大変なことなんだな」
「いやいやぁ。高い医学部の壁だって、莉桜様の前にはひれ伏すと思うけど」
おどけたような拓実の言葉に、じろりとそちらを睨む莉桜。いや、医学部って……。
「莉桜、医者になるの?」
そんなの初耳だ。そもそも僕たちは毎日を楽しくなんとなくだらだらと過ごしてきたけれど、こういった将来の話をしたことがあまりなかったのだ。みんな大学へ進学するのだろうとは漠然と感じてはいたが、具体的なことは話していなかった。
もしかしたら僕以外の三人は、それぞれで何かしらの情報を交換していたのかもしれない。あまりにも僕が、進路について無頓着だったから話題に出さなかっただけで。
「ああ、家を継ぐから」
莉桜は耳たぶを指先で触りながら、さらりと言った。
継ぐ──。つまり、莉桜の親って──。
「狭間病院の院長だよ。バイト先の裏にある、あそこのな」
拓実の言葉に、僕は思わず大声で「マジか‼」と叫んでしまった。隣にいる胡桃が両手で耳を塞いでいたので、相当な声量だったのだと思う。
狭間病院──、それはこの街では一番大きな総合病院だ。何かあれば狭間病院。救急車だって、目指せ狭間病院なのである。
そこの娘が莉桜だなんて、まったく知らなかった。
「莉桜は、ずっと医者になりたかったの?」
小さい頃から医者である親の背中を見ていると、自然と目指したくなるものなのかもしれない。
「〝なりたい〟っていうよりは、〝なるんだろうな〟みたいな感じ。小さい頃から、医者になるのが当たり前みたいに言われて育ってきたから」
いつもと同じ、冷静な莉桜の横顔。その言葉には、どんな感情も込められていないように感じた。夢を語るような期待感なんてまるでなくて、だからと言って自分のやりたいことをあきらめているという絶望感もまとっていない。
彼女の言う通り、医者を目指すことは莉桜にとって当然の出来事なのだろう。
「医者って、そう簡単に目指せるものじゃないだろ? それを当然って言えるの、本当にかっこいいな」
素直にそう述べると、莉桜は不思議なものでも見るような目をしたあと、ふっと吹き出す。何がおかしいのかよくわからなかったけれど、次いで胡桃が笑い出し、拓実までもがそっぽを向きつつ、口元を緩めていた。
これまでは、〝今〟だけが大事だと思ってきた。だけどこうして未来のことを話してみるのも、悪くはないのかもしれない。きっと僕らの未来には、それぞれお互いの姿があるから。
「胡桃は? 行きたい大学とかあるの?」
そんな莉桜と同じ予備校に通うことに決めた胡桃は、どんな未来を描いているのだろう。胡桃は大きな瞳を右上に動かすと、しばらく考えるような素振りを見せた。
「わたし、自信をつけたいんだよね。ちょっと高い目標を掲げて、そこに向かってちゃんと努力できるとか結果を出せるとか。そういうので自分もちゃんとやれるんだ、って思いたい。特になりたい職業や、やりたいことがあるわけじゃないんだけどね」
たしかに胡桃は、ふとした中で自分に対して不安そうな言動を取ることがあった。
例えば宿題の箇所を何度も確認したり、ふたりで会話をしているときに「今のわたしがした話、ちゃんと伝わった? 大丈夫?」なんて聞いてくることも一度や二度ではなかった。
大丈夫だよと僕が言っても、あまりその言葉が効いていなかったのは、自分に自信が持てずにいたからだったらしい。
「胡桃、すごいじゃん」
純粋に、胡桃の考え方をすごいと思った。
「自分で改善したいところを見つけて、どうしたら克服できるのかって考えてさ。自分の弱さと向き合うことだって難しいのに、きちんと行動ができるってすごいことだよ」
僕の言葉に彼女は少し目を見開いて、それからはにかむように微笑む。
「拓実は地元のF大でしょ? 葉はどうするの?」
莉桜の話に出てきたF大は、このあたりからは一番近くにある私立大学だ。偏差値もそこまでは高くないので、合格圏内だろうということだった。
僕以外、みんなちゃんと、将来のことを考えているんだ。いや、僕だってまったく考えていないというわけではない。
「僕は家を出て、働くことに決めたんだ。あと四年も勉強しなきゃいけないなんて、僕には耐えられそうにもなくて」
ぶるぶるっと大袈裟に肩を震わせ、自分の両腕をさすって見せる。
進学せずに働くなんて、なにか事情があるのだろうと思われてもおかしくはない。それでも、大変だなとか、かわいそうだとか、そういう感情は向けられたくない。この三人ならばそんな風に思ったりはしないだろうと自分に言い聞かせながらも、こうして表情を作ってしまう僕は、やはり信じ切れていないのかもしれない。
「幸か不幸か、僕にはかなえたい夢も学びたいこともあるわけじゃないからさ」
勉強は性に合わないみたいだ、と笑う僕を、三人はどんな目で見ているのだろう。それを確認するのが怖くて、なかなか前を向くことができない。
昔向けられたような同情の目がそこにあったらどうしよう。
腫れ物に触るような感覚で、接せられたらどうしよう。
次に僕はどんなおどけた顔をすれば、みんなが不審がらずに、いつもと同じ顔をしてくれるのだろう。
「働く──か。いいね」
俯く僕の耳を、莉桜のさらりとした声が柔らかくかすめていく。
「仕事はなにやんの?」
拓実の声も、何の濁りもなく鼓膜を揺らす。だから僕は、少しだけ顔をあげることができたんだ。
「……今のコンビニで、そのまま働いてもいっかなーって」
本当は、進学しない理由ならちゃんとある。叔父さんと叔母さんに、これ以上迷惑をかけたくない。鈴との家族水入らずの時間を過ごしてほしい。
だけどこんなことは、みんなが知らなくていいことだ。これから受験で大変な時期に入るというのに、僕のことで色々気を遣わせたくはないから。
「いいね! 葉、あの制服似合ってるもん」
軽やかな胡桃の言葉が、僕の心にそっと寄り添う。
──ああ、大丈夫だ。この三人は、ここにいる〝僕〟を、見てくれている。
一般的な常識やものさしで測ったりせず、きちんとまっすぐ向き合ってくれる。
僕のそばにいる三人が、この三人で本当によかった。
「あー、なんか……幸せだー!」
熱いものが溢れる前に、僕は水平線へと身体を向けた。
分厚い入道雲に、穏やかに凪ぐ青い海。
たしかにこの夏は、きっともう二度は巡らない。それでも大事な三人が、将来へと向かうための大きな意義のある時間になることもまた事実だ。それならば僕は精一杯、みんなのことを応援しよう。たとえ夏休み中、なかなか顔を合わせられなくても──。
「若者たちよ! 夏休みは学校の図書室で勉強会なんていかがでしょう? 超優秀な講師付きよ!」
そのときだった。僕らの後ろに、この街には不釣り合いな真っ赤なオープンカーが停まった。
「夏休み何する⁉ どこ行く⁉」
両手を勢いよく突き上げれば、アイスキャンディの滴がキラリと舞う。すでに学んでいる胡桃は、被害を免れるためにサッと拓実の後ろに隠れた。
終業式を終えた僕らは、四人並んでいつもの海沿いを歩いていた。前回の夏、僕はこの日、この場所で、莉桜と胡桃を傷つけた。それをずっと、後悔することになるとも知らずに。
嫌な記憶がみぞおちあたりまで押しあがり、僕はぶんぶんと頭を振った。
「あれはもう、なくなった過去だ」
誰にも聞こえないよう、僕は自分に言い聞かせる。あれはもう、僕の中にだけ残っている過去の出来事だ。
状況は変わった。もう二度と、同じことを繰り返したりはしない。いや、そういうことにはならないだろう。
「本当に葉は、夏大好き!って感じだよね」
無邪気に笑う胡桃の、夏服の襟がさわやかに揺れた。
四人で一緒に夏の海を前にアイスキャンディを食べる。これが当たり前なんかじゃないってこと。神様がくれたチャンスによって取り戻した夏なんだってことを、僕だけが知っている。だからこそ僕は、この夏を一生に残るものにしようと思っていたのだ。
「胡桃、今日何時に待ち合わせする?」
「授業始まるのが五時だから、十五分前くらいに着けばいいかなあ」
しかし、自然と繰り広げられる女子ふたりの会話に、僕は思わず首をかしげた。
授業? 五時に始まる?
「胡桃も、莉桜と同じ予備校に入ったんだっけ」
女子ふたりの会話に拓実が加わる。夏の強い日差しが、僕の心をジリジリと焼き付け焦がす。
高校三年生の夏休み。それは、受験生の夏休みとも言い換えることができる。たしかに最近は学校でもやたらと、進路についての話が出ているとは思っていた。だけどそのことが、僕の楽しみにしていた時間を奪うことになるとは。
「勉強漬けの夏休みかぁ」
がっくりと肩を落とす僕の背中を、胡桃がとんとんと軽く叩く。
「夏祭りは行けるし。それに受験が終われば、ぱぁーっとみんなで遊べるよ」
胡桃の言葉に、僕は気持ちを切り替えるように空を見上げた。入道雲がもくもくと立ち上る夏の空は、どんなときでも僕の好きな色をしている。
いつまでもうじうじしているのは僕らしくない。なによりも前へ進もうと頑張っている仲間の背中を押すのが僕の役目だ。
「莉桜は今でも成績優秀なのに、やっぱり受験って本当に大変なことなんだな」
「いやいやぁ。高い医学部の壁だって、莉桜様の前にはひれ伏すと思うけど」
おどけたような拓実の言葉に、じろりとそちらを睨む莉桜。いや、医学部って……。
「莉桜、医者になるの?」
そんなの初耳だ。そもそも僕たちは毎日を楽しくなんとなくだらだらと過ごしてきたけれど、こういった将来の話をしたことがあまりなかったのだ。みんな大学へ進学するのだろうとは漠然と感じてはいたが、具体的なことは話していなかった。
もしかしたら僕以外の三人は、それぞれで何かしらの情報を交換していたのかもしれない。あまりにも僕が、進路について無頓着だったから話題に出さなかっただけで。
「ああ、家を継ぐから」
莉桜は耳たぶを指先で触りながら、さらりと言った。
継ぐ──。つまり、莉桜の親って──。
「狭間病院の院長だよ。バイト先の裏にある、あそこのな」
拓実の言葉に、僕は思わず大声で「マジか‼」と叫んでしまった。隣にいる胡桃が両手で耳を塞いでいたので、相当な声量だったのだと思う。
狭間病院──、それはこの街では一番大きな総合病院だ。何かあれば狭間病院。救急車だって、目指せ狭間病院なのである。
そこの娘が莉桜だなんて、まったく知らなかった。
「莉桜は、ずっと医者になりたかったの?」
小さい頃から医者である親の背中を見ていると、自然と目指したくなるものなのかもしれない。
「〝なりたい〟っていうよりは、〝なるんだろうな〟みたいな感じ。小さい頃から、医者になるのが当たり前みたいに言われて育ってきたから」
いつもと同じ、冷静な莉桜の横顔。その言葉には、どんな感情も込められていないように感じた。夢を語るような期待感なんてまるでなくて、だからと言って自分のやりたいことをあきらめているという絶望感もまとっていない。
彼女の言う通り、医者を目指すことは莉桜にとって当然の出来事なのだろう。
「医者って、そう簡単に目指せるものじゃないだろ? それを当然って言えるの、本当にかっこいいな」
素直にそう述べると、莉桜は不思議なものでも見るような目をしたあと、ふっと吹き出す。何がおかしいのかよくわからなかったけれど、次いで胡桃が笑い出し、拓実までもがそっぽを向きつつ、口元を緩めていた。
これまでは、〝今〟だけが大事だと思ってきた。だけどこうして未来のことを話してみるのも、悪くはないのかもしれない。きっと僕らの未来には、それぞれお互いの姿があるから。
「胡桃は? 行きたい大学とかあるの?」
そんな莉桜と同じ予備校に通うことに決めた胡桃は、どんな未来を描いているのだろう。胡桃は大きな瞳を右上に動かすと、しばらく考えるような素振りを見せた。
「わたし、自信をつけたいんだよね。ちょっと高い目標を掲げて、そこに向かってちゃんと努力できるとか結果を出せるとか。そういうので自分もちゃんとやれるんだ、って思いたい。特になりたい職業や、やりたいことがあるわけじゃないんだけどね」
たしかに胡桃は、ふとした中で自分に対して不安そうな言動を取ることがあった。
例えば宿題の箇所を何度も確認したり、ふたりで会話をしているときに「今のわたしがした話、ちゃんと伝わった? 大丈夫?」なんて聞いてくることも一度や二度ではなかった。
大丈夫だよと僕が言っても、あまりその言葉が効いていなかったのは、自分に自信が持てずにいたからだったらしい。
「胡桃、すごいじゃん」
純粋に、胡桃の考え方をすごいと思った。
「自分で改善したいところを見つけて、どうしたら克服できるのかって考えてさ。自分の弱さと向き合うことだって難しいのに、きちんと行動ができるってすごいことだよ」
僕の言葉に彼女は少し目を見開いて、それからはにかむように微笑む。
「拓実は地元のF大でしょ? 葉はどうするの?」
莉桜の話に出てきたF大は、このあたりからは一番近くにある私立大学だ。偏差値もそこまでは高くないので、合格圏内だろうということだった。
僕以外、みんなちゃんと、将来のことを考えているんだ。いや、僕だってまったく考えていないというわけではない。
「僕は家を出て、働くことに決めたんだ。あと四年も勉強しなきゃいけないなんて、僕には耐えられそうにもなくて」
ぶるぶるっと大袈裟に肩を震わせ、自分の両腕をさすって見せる。
進学せずに働くなんて、なにか事情があるのだろうと思われてもおかしくはない。それでも、大変だなとか、かわいそうだとか、そういう感情は向けられたくない。この三人ならばそんな風に思ったりはしないだろうと自分に言い聞かせながらも、こうして表情を作ってしまう僕は、やはり信じ切れていないのかもしれない。
「幸か不幸か、僕にはかなえたい夢も学びたいこともあるわけじゃないからさ」
勉強は性に合わないみたいだ、と笑う僕を、三人はどんな目で見ているのだろう。それを確認するのが怖くて、なかなか前を向くことができない。
昔向けられたような同情の目がそこにあったらどうしよう。
腫れ物に触るような感覚で、接せられたらどうしよう。
次に僕はどんなおどけた顔をすれば、みんなが不審がらずに、いつもと同じ顔をしてくれるのだろう。
「働く──か。いいね」
俯く僕の耳を、莉桜のさらりとした声が柔らかくかすめていく。
「仕事はなにやんの?」
拓実の声も、何の濁りもなく鼓膜を揺らす。だから僕は、少しだけ顔をあげることができたんだ。
「……今のコンビニで、そのまま働いてもいっかなーって」
本当は、進学しない理由ならちゃんとある。叔父さんと叔母さんに、これ以上迷惑をかけたくない。鈴との家族水入らずの時間を過ごしてほしい。
だけどこんなことは、みんなが知らなくていいことだ。これから受験で大変な時期に入るというのに、僕のことで色々気を遣わせたくはないから。
「いいね! 葉、あの制服似合ってるもん」
軽やかな胡桃の言葉が、僕の心にそっと寄り添う。
──ああ、大丈夫だ。この三人は、ここにいる〝僕〟を、見てくれている。
一般的な常識やものさしで測ったりせず、きちんとまっすぐ向き合ってくれる。
僕のそばにいる三人が、この三人で本当によかった。
「あー、なんか……幸せだー!」
熱いものが溢れる前に、僕は水平線へと身体を向けた。
分厚い入道雲に、穏やかに凪ぐ青い海。
たしかにこの夏は、きっともう二度は巡らない。それでも大事な三人が、将来へと向かうための大きな意義のある時間になることもまた事実だ。それならば僕は精一杯、みんなのことを応援しよう。たとえ夏休み中、なかなか顔を合わせられなくても──。
「若者たちよ! 夏休みは学校の図書室で勉強会なんていかがでしょう? 超優秀な講師付きよ!」
そのときだった。僕らの後ろに、この街には不釣り合いな真っ赤なオープンカーが停まった。