柊夜さんはどうなのだろう。先ほどは喜んだように見えたので、ふたりめを欲しがっているのかもしれないけれど。
 すでに数分が経過しているので、検査薬の結果は判明している。
 けれど柊夜さんに差しだす勇気が出なかった。
 うつむいた私の肩に、柊夜さんは優しく手を乗せる。
「わかった。では、こうしよう。俺はベッドできみを抱きしめている。きみは抱擁されながら、ふたりで検査薬を確認するんだ。互いの存在を感じながらであれば、どのような結果でもふたりで受け止められるのではないかな」
「その通りですね。それなら結果を見る勇気がもらえそうです」
「では、こちらへ」
 柊夜さんに促され、寝室へ向かった。ふたりで体を密着させてベッドに腰かける。
 彼は長い腕をまわし、私の体をぎゅっと抱きしめた。
 熱い唇がこめかみに押し当てられる。肌で彼の吐息を感じる。
 やや呼気が荒いので、柊夜さんも結果を前に緊張しているのだとわかった。
 ごくりと息を呑んだ私は手にしている検査薬を、そっと胸の前に持ってくる。
「見ますね……」
「ああ。一緒に見よう」
 どきどきと胸の鼓動は最高潮に達する。
 手をずらし、覆い隠していた窓を晒す。
“終了”という表示の窓部分には、すでに青いラインが出ていた。これが出ると、正しく尿がかけられて判定が済んでいるというしるしだ。
 そして……ふたりで目にした判定窓には、くっきりと青いラインが刻まれていた。
 見間違えようがなかった。太い青の縦線は、私が身籠もったことを示している。
「あ……!」
「陽性だ。きみは、妊娠している。俺とのふたりめの子どもだ」
 確信を持って言い切った柊夜さんは、いっそう私の体をきつく抱きしめる。
 柊夜さんとの、ふたりめの子が、私のお腹に息づいている。
 歓喜とともに、不安のかけらが胸に舞い散る。この子がもし、悠のように特殊な力を持っていたらと思うと心配でたまらない。
 けれど、柊夜さんはその憂慮を容易く打ち消した。
「ありがとう。俺の子を身籠ってくれて」
 私は、たったそのひとことで、救われたのだった。
 これまでの懊悩も、そして今後の憂慮もすべて、柊夜さんを愛しているという想いが越えていく。
「柊夜さん……あなたは、私の大切な旦那様です」
 胸に沸き上がった愛しさのままにつぶやくと、柊夜さんは真紅の双眸を細めた。
「俺にとっても、きみは大切な妻だよ」
 くちづけを交わす私たちは、新たな命を授かったことを喜び合ったのだった。