鈴木さんが何だか校内で崇められている存在だというのは把握した。
それはひとまずいいとして、彼女の口から放たれた単語が強烈なインパクトを与える。
「そうよ。山田華さん、あなたは鈴木先輩の浮気相手なの!」
「いや、違うけど」
「言い逃れはできないわよぅ。証拠はあがってるんだから!」
突如取り調べと化した会話。
ばん、と机を叩いた彼女は力の加減を誤ったのか、自身で打ち付けた手の平を摩りながら続けた。
「毎朝一緒に登校していた恋人がいたっていうのに、あっさり童女に鞍替えなんて……! いくら国宝の鈴木先輩とはいえ、私は失望しかけたわ!」
最早どこからツッコミという名の訂正を入れればいいのだろうか。
とりあえず国宝だなんていう称号は、日本の名誉のためにも早急に取り消した方がいいと思う。
そもそも、鈴木さんに彼女がいただなんて知らなかった。彼は自分のことを全く話してくれないし、恋人の有無にまで気が回らなかったというのが正直なところだ。
「いやだから、本当にそういうのじゃなくて。というか鈴木先輩に彼女がいるって知らなかったし……」