わざとらしく「一人」を強調して、ジト目で彼を見つめる。
するとどういうわけか、彼は箸を置いて、両手で自身の頬を思い切り引っ張った。べ、と舌を出してきたので、流石に面食らう。
「……何ですかその顔」
「にらめっこじゃないのか?」
「違います。勝手に拡大解釈しないで下さい」
「悪い、華が変顔していたからてっきり」
「誰が! どこが! 変顔ですか!」
仮にも花の女子高生にもなろう私に、失礼すぎやしないだろうか。
いちいち怒っていたら本当にきりがない。朝から余計なことにエネルギーを使ってしまった。
それはともかく、彼の生活習慣を正すのは優先して行うべきだ。
同居において何がストレスになるか。人間関係、味の好み、役割分担等々。様々あるけれど、生活リズムの違いが少なからず影響を及ぼしてくると思う。
彼の体のことを考えても、やはり食から睡眠から、直していった方がいいだろう。
「鈴木さん、明日から朝は私とジョギングしませんか」
朝の新鮮な空気を吸えば、彼だって少しは考えを改めてくれるかもしれない。それに、体を動かせば夜は自然な疲労感で眠りやすいはず。
「運動は苦手だ」
「ジョギングなんて運動に入りませんよ。ウォーキングでもいいですから」
渋い顔で視線を逸らす彼に、拳を握って説得する。
納得したとは言い難いけれど、私のしつこさに折れたのか、「分かった」と彼は眉根を寄せた。