最初のページに挟まれていた、一枚の写真。そこには見知らぬ青年が写っている。そして彼の隣、笑顔で佇んでいるのは――


「お母さん……?」


 髪色は今と比べて僅かに明るく、印象が異なって見えた。

 数年ほど前の写真だろうか。
 一体、いつのものなのか。隣の青年は誰なのか。分からないことだらけだ。こんな写真は初めて見た。

 どういうことなの。どうしてお母さんの写真がこの家にあるの。なんで。どうして。


「華! ねえ、大丈夫? 横になった方がいいよ」


 後ろから肩を掴まれ、我に返る。

 ごめん、と振り返ろうとした刹那、脳がぐらりと揺れて、目の前が霞んだ。視界が暗くなり、堪らずしゃがみ込む。


「華!?」


 大丈夫、ただの立ち眩みだから。伝えようとした言葉は声にならず、喉の奥で潰れた。

 暑い。だるい。苦しい。
 数分前まで忘れていた感覚が、一気に押し寄せてくる。投げやりに目を閉じると、そのまま思考が闇に沈んだ。