一人俯いて考えを巡らせていると、チョコが声色を変えた。それが話題の切り替えだと分かったので、私は素直に顔を上げる。
「もうすぐ期末テストだけど、進捗は?」
「あ」
「忘れてたって顔してますなあ」
気を抜いた途端、箸からミニトマトがぽろりと滑り落ちた。慌ててその行き先を確認すると、ちょうどお弁当箱の中に着地するところだ。
ほっと胸を撫で下ろして、いやいやそれよりも、と頭を振る。
「今テストなんてしてる場合じゃないのに……」
色々懸念事項が重なって、パンクしてしまいそうだ。
ため息交じりに呟けば、チョコが「ちょっと」と咎めてくる。
「夏休みまでには関係修復しといてよー。遊びに行っても気まずいじゃない」
遊びに来る前提なのが絶妙に図々しいけれど、確かに彼女の言う通りだ。
テストが終われば夏休み。家にいる時間も必然的に増え、今のままだと休暇を満喫できそうにない。
「海行きたいしー、バーベキューもしたいしー、花火も見に行きたいしー」
指折り願望を口にする友人を眺め、苦笑しつつ聞き流す。
タイムリミットは案外、すぐそこだ。