言うこと、とは。
 眉をひそめる私に、先輩は依然として険しい表情のままだ。

 まさか、ここにきて腹を割って話す気になってくれたのだろうか。昨日はごめんなさい、だとか、そういう謝罪の文言を望んでいるということか。


「……先輩、」

「『ただいま』を言ってないだろ」


 想定外の指摘に、数秒思考が止まる。


「ルール違反だぞ。いつもはっきり言わないのは大目に見てたけどな、今日は確実に黙って入ってきてた」


 それは私だけじゃなくて、先輩にも非があると思うんですが。
 しかしそれを言ってしまうと面倒なことになるのは目に見えていたので、渋々妥協する。


「……ペナルティは何ですか」

「ゲームに付き合え。一位になるまで寝れま10を開催する」

「うえっ、徹夜させる気ですか!? 私ゲーム苦手って言いましたよね!?」

「だからだろ」


 なんて無慈悲な。普通にゲームをするだけでも一苦労なのに、そのうえ一位だなんて絶対に無理だ。

 結局その夜は、私のあまりの悲惨さに提案者の先輩が疲弊するほど、同じコースを何度もリトライすることになった。