平坦に告げる彼曰く、鈴木先輩から「返して欲しい」と何度か頼まれたのだけれど、その理由までは知らなかったとか。私が当てた景品、しかも私がその芸人を好きであることを聞かされたのが昨日だったそうだ。
「ああ、いえ……鈴木先輩が勝手にしたことなので。むしろ、何だかすみません」
タカナシ先輩は全く、微塵も悪くない。
本当に、鈴木先輩には振り回さっれぱなしだ。せめて恋人にくらいはもう少し気遣いがあっても良いのではないだろうか。
「というか、タカナシ先輩も15時のヒロイン好きなんですね。意外でした」
いま大ブレイク中の女性お笑いトリオ。最近テレビで見ない日はない。
うち一人が元アイドルだったそうで、その可愛らしさも魅力の一つだ。
「うん。基本的に芸人は好きかな」
「私もです。M-1見てますか? 私毎年チェックしてるんです」
「もちろん」
周りに熱烈なお笑いファンはなかなかいなかったため、これは貴重な話し相手になりそうだ。
内心浮足立ちながら、拳を握って意気込む。
「私、いつか生で見たいなと思ってるんですよ。倍率凄いですし、本当に夢の夢って感じですけど……」