* * *
休み時間に自販機に飲み物を買いに来たとき、どこからともなく聞こえてきた。
『三日月さんが倒れたらしい』
その声に、身体の動きがピタリと止まった。
えっ……三日月さんが、倒れた?
何かあったのかな……。
自販機の前で立ち止まって聞き耳を立てても、それ以上の情報は得られそうになくて。
そもそも僕が行ったところで何もしてあげられないし。第一、そんな仲でもない。
だから、僕が気にすることじゃない……
その、はずなのに。
変な動悸がするのは、なぜだろう。
僕は、気になって仕方なかった。
せっかくここまでジュースを買いに来たというのに、何も買わずじまいで踵を返すと、自販機の前から離れて行った僕。
そして、僕は走った。
彼女がいるはずの、保健室へ。