──ピピーッ

途中、笛が鳴った。


「前半後半交代なー」


ようやく休憩できる、とホッとして息を整えながら僕は急いでピッチを出た。

いつもより走った僕は、汗が滲む。

額を無造作に拭いながら、日陰に逃げ込んだ。


「茅影、おつかれ」


僕のそばにやって来る小武に、おつかれ、と小さく返事をすると、あっちー、と言って笑いながら、腕でおでこの汗を拭った小武。


あたりをキョロキョロ見渡すけれど、いつもそばにいるやつがいない。


「…あれ、藍原は?」

「あー、なんか次も出るんだって。バレないように」


ピッチへ指をさすと、藍原の姿が視界に映り込んだ。

なんでまた、そう思っていると、


「なんでも三日月さんにかっこいいところ見せたいんだと」


小武の言葉になるほどと納得をした僕は、へえ、と相槌を打った。

瞬間、さっきのピッチでの出来事を思い出す。


「……だからあんなに張り切ってたんだ」


思わず、ボソッと呟いた。

藍原が、僕にパスを回すなんておかしいなって思ってた。

だから小武の答えを聞いたとき、やっと疑問が解決した。


つまりそれは、“好きな子の前ではかっこつけたいもの”らしい。

僕には、全然理解できなかったけれど──。