「──私は、向葵くんのことちゃんと知ってるからね!」


突然告げられた言葉に、え、と驚いて顔を向けると。


「向葵くんのことを誰かが暗いとか影が薄いとか言ったとしても、私は本当の向葵くんのこと知ってるから。だからなんと言われようと、私は向葵くんの一番の理解者だから」


陽だまりのような言葉が落ちてきた。


心の中が温かくなった。

けれど、なんだか照れくさくて。


「……なに、言ってんの」


顔を逸らして、気を紛らわせると、僕の顔を見て「あ〜」と声をあげると。


「また向葵くん照れてる!」

「て、照れてないし…」


わざとそれを言葉にするのは、三日月さんが僕をからかっているから。

内心恥ずかしすぎた僕は、大きな口を開けてパンを頬張った。


顔、あっつ……。

なんで僕ばかりこんな目に遭うんだ。


“向葵くんのことを誰かが暗いとか影が薄いとか言ったとしても、私は本当の向葵くんのこと知ってるから。だからなんと言われようと、私は向葵くんの一番の理解者だから”


さっき三日月さんに言われた言葉を思い出す。

それは、僕の心の深いところに、じんわりと溶け込んだ。

その事実だけは、もう隠しようがなかった。