「嫌われてないって知れて嬉しいな」
そう告げられて、え、と困惑した声をもらしながら、おそるおそる顔をあげると、優しく微笑んでいる三日月さん。
「だって今までの向葵くんは私のこと嫌い苦手だってオーラが伝わってきてたし、青春するってのも無理やりだったから、向葵くんの本心が見えなかったの」
でもね、と続けると、
「今みたいに本心をぶつけてもらえて、向葵くんの心の中が少しだけど見えた気がしたの。だから私、すごく嬉しい」
柔らかい声色で、そう告げられた。
なんだ、この状況。全然よく分からない。
人に向かって嫌いじゃないって言っただけなのに、まるで“好き”だと言ってしまったようで羞恥心が僕を襲う。
「向葵くん、ありがとう」
「い、いやべつに…」
なんでこんなことになったんだ?
僕はここに何をしに来たんだ?
ただ、お昼を食べようここに来たはずなのに、本来の目的も果たせぬまま、代わりに告白まがいなことを告げて。
僕自身も、大概おかしいやつみたいだ。
「それより向葵くんもこっち座って食べれば」
「え? いやー…」
さすがにさっきの言ったことが恥ずかしすぎて、できることなら遠慮したい。