「だったらどうして他の場所行こうとするんだろう。それってやっぱり私と一緒にいたくないからだよね?」

「それは…」


言葉に詰まって口ごもっていると、


「あー、やっぱり私のこと嫌いなんだ!」


後ろからそんな声が聞こえて、僕の身体に突き刺さった。


瞬間、僕の心が叫びたがって──


「三日月さんのことそんなに嫌いじゃない!」


振り向いて、言ってしまった僕。


心の中の鍵が緩んでしまっているのかもしれない。


しまった、そう思っても時すでに遅くて。

誤魔化しても仕方ないし、全部言ってしまえ。


「だから、その、嫌いじゃない」

「私のこと?」

「……うん」


恥ずかしかった。

でも、なぜか誤解されたくないと思った。


今までの僕なら、誤解を解こうと思わなかったのに。

素直になることが、こんなに勇気がいるものなんだと思った。


だけど、まるで僕が告白したみたいになって、


「でも、好きでもないから」


途端に焦った僕は、言葉を付け足して顔を逸らした。


「嫌いじゃないけど好きでもない?」

「……うん」


僕は、一体何が言いたかったんだ。

そんなふうに思って、言わなければよかったなと後悔していると、そっか、と声が落ちてくる。