* * *

昼休み、弁当を忘れた僕は、売店でパンを二つ買ってから中庭へ向かった。

休み時間に藍原に言い返したことで教室で食べるのが少し気まずかったから。


「──あっ」


けれど、中庭には先客がいた。

三日月さんだ。


彼女を見た瞬間、踵を返してその場を離れようとしたけれど、ちょっと待って、と声をかけられて立ち止まる。


「向葵くん、ここに食べに来たんじゃないの?」

「そうだったけど他の場所探す」

「どうして?」


それは、きみがいるからだろ、とは言えなくて背を向けたまま黙り込んでいると、


「もしかして私がいるから?」


核心を突いてきて、思わず肩が上がる。


それを見逃さなかった彼女は、ふーんそっかぁ、と軽い返事をした。


「でもそんなに避けられちゃうと私、落ち込んじゃうなぁ……」


と、告げたあと、あからさまに、はあ、とため息をついて、


「この前も藍原くんの前では話しかけるなって言われたし、最初の頃なんて教室に来ないでって言われちゃったし」


まくし立てられる言葉の全てに記憶が手繰り寄せられて、さすがの僕も申し訳なくなった。


「私って嫌われちゃってるのかなー」

「べつにそういうわけじゃ…」


最初の頃は、苦手だと思って避けていたのは確かだけれど。