「三日月さんと本の内容について語り合うために……?」
思いついた答えを口に出してみると、ばっか!と机に両手をついて顔を真っ赤にさせたあと、
「いやっ、べつにそういうことじゃねぇし! 俺はたまには本読んでみてもいいかなーと思っただけであって……べつに下心ありきとかじゃねぇからな?!」
まくし立てられるように告げられた言葉の半分も頭に入らなかったけれど、最後の一文だけはしっかりインプットされた。
つまりあれだ。
三日月さんとお近づきになりたいがために、僕が借りていた文庫本を利用しようってわけだ。
「……ふーん」
あれだけ廊下で本ばっかり読んでる僕のことをバカにしてたくせに。
「なっ、なんだよ!」
「いやー、べつに」
目線を下げてフッと笑うと、おまえなぁ、とカァッと顔を赤く染めて恥ずかしそうにしながらも、僕の肩を掴んでくるから、
「……僕にそんなことしていいの? 藍原が今言ったこと全部僕言っちゃうかもしれないけど」
「お、脅しても無駄だぞ」
ふーん、そうなんだ。そっちがその気なら僕にだって手段はある。
「じゃあ、口が軽くて言っちゃうかもしれないけど、そのときは仕方ないよね?」
頬に手をついて口元に笑みを浮かべながら、そう言うと、くっそ、とボソッと呟いた藍原。
いつもとは立場が好転する。
だから、藍原の歪んだ表情がよく見える。