「こんなこと滅多にないし写真撮っておこうかな」


おもむろにかばんの中からスマホを取り出すと、空へとかざした。


灰色の雲の隙間から覗く夕陽の光に照らされて、はっきりと浮かぶ雨上がりの虹。

綺麗な七色の光りを放っていた。


カシャっ、シャッター音が鳴ったあと、


「うん、いい感じ」


スマホを覗き込んで口元を緩めた彼女。


「あの、さ…」

「ん?」

「……あとで、僕にもそれ送って」


そのときの僕は何を思ったのか、気がついたらそう言っていた。


心が動くってこういうことか。
心が満たされるってこういうことか。

たった今、僕は、目の前の景色に心を奪われた。


「うん、分かった」


雨上がりの空は、七色の虹が光った。

それを僕はきっと、ずっと、覚えているだろう。