「そこで、何してるの?」


突然聞こえた声に、え、と肩が上がりながら、おそるおそる顔をあげると、さっきまで告白を受けていたはずの女の子が僕の方へ歩いて来ていた。


……最悪の状況だ。

なんせ僕は、木の影で告白現場を盗み見てしまっていたのだから。


「べ、べつに、なにも…」


フイッと視線を逸らしていると、なんて嘘、と呟いた彼女は、僕より先に缶ジュースに手を伸ばし掴み上げた。


「あっ、ちょっと…!」

「ほんとのことを教えてくれたら返してあげるよ」


楽しそうに頬を緩ませながら、くるくると回る。

そのせいでスカートがひらひらと揺れて、僕の目線からはかなり際どかった。

このままいたら僕は、人として何かが終わるような気がして慌てて立ち上がる。


「か、返せよ!」

「だったらちゃんと説明してよ」


なんなんだ、この子。

さっきまで櫛谷の前では塩らしく女の子らしいを演じていたくせに、僕の前では自分が優位だとでも言いたげな表情を浮かべている。


……ああ、もうっ、面倒くさいな。とっとと素直に答えて返してもらおう。


「ジュース買って帰ろうとしたらこんな場所で告白なんかしてるし、そんなときに見つかったらそれこそ盗み見てるって騒がれるのが嫌で安易に動けなかっただけだよ!」


感情の矛先を目の前の転校生にぶつける。