* * *

「あのさぁ、ほんとああいうのやめて」


朝よりは、弱まった雨。

帰り道、傘をさしながら三日月さんと歩く。


「ああいうのって?」

「人前で声かけないでってこと」


そう言うと、ああ、と思い出したように声をあげると、


「だって、あからさまに声かけるなオーラ出してたから、逆に声かけたくなっちゃって」

「……なに。逆にって」

「そういうときって無性に声かけたくなっちゃうでしょ?」

「ならないよ。そんなの三日月さんだけでしょ」


なに、みんな当然みたいなテンションで言ってんの。

それに三日月さんのせいで、


「藍原にまた目つけられてるし」

「藍原くん?」


なんで、とでも言いたげな表情で。

三日月さんのことが好きだから、なんてさすがに言うことができなかったので、


「話してる途中に邪魔されたからじゃないの」


主に、三日月さんのせいだけど。


「邪魔って茅影くんが?」

「そうさせたのは、きみだから」

「なんで?」

「だから、僕にわざわざ声かけるからだろ。何の本読んでるのって」


無視すればよかったものの、わざとらしく声なんてかけるから。


「さっきの帰りだってすっごい睨んでたんだからな」

「藍原くんと仲悪いの?」