それは、コロコロと転がって。
──しまった…!!
「俺のこと嫌い?」
けれど、二人は僕が落とした缶ジュースには気づいている様子はなかった。
「ううん、そうじゃないの! でも、私まだ今は誰かと付き合うとか考えられなくて……」
だから、と続けると、
「ごめんなさい」
深く頭を下げた女の子。
顔は見えなかったけれど、頭を下げた後ろ姿がすごく綺麗だと思った。
なんで僕が、そんなことを思うんだ……?
「…そっか、わかった」
考えている間も会話は進む。
「でも、これからも友達として仲良くしてくれる?」
「う、うん、もちろん!」
「よかった!」
視線を戻せば、少し気まずそうな雰囲気が流れる中、笑顔を浮かべる櫛谷。
じゃあまた、そう言うと手をあげて、歩いて行った。
一部始終とならず、結局最後まで見てしまった僕は、少しだけ申し訳なく思った。
「…そんなことより、早く缶ジュース拾って戻ろう」
転校生に気づかれないように、そーっと木の影から出てそれに手を伸ばそうとする──…