二限目あとの休み時間になって、僕は、誰にも気づかれないように屋上の階段へと向かった。
すると、すでに三日月さんは階段に座って待っていた。
僕に気づくと、スマホに落としていた視線を向けて、
「ちゃんと来てくれてありがとう!」
まるで、こうなることを予測していたかのように笑った。
けれど、僕からすれば、
「……そりゃあ、あれだけ脅迫されたら誰だって来るでしょ」
「脅迫? なんとことー」
髪の毛を指に絡めてクルクルと遊びながら、それより、と言って立ち上がった。
「見つからないうちに早く行こう!」
こんな場所に呼び出されて行く場所なんて、一つしか検討がつかないけれど、
「……どこに?」
「屋上!」
案の定、分厚い扉を指さした。
「いや、なに言って…」
「なにって屋上に行くんだよ?」
まるで、僕がおかしいのかと言いたげな表情で、キョトンとしたから、
「じゃなくて、もうすぐ授業始まるじゃん! なのに、なんで…」
「だから」僕の言葉に被せたあと、分厚い扉のドアノブへと手をかけて、
「授業サボって、屋上で青春してみたいから」
そう言って、ニコリと笑うと、ドアノブをひねる。
ガチャっと音を立てて開いた扉の向こうから、まばゆい光が差し込んで、僕は思わず、目を細めた。