「…ああ、そういえば、僕が家に帰るとき後ろにいたかも。なんでも帰り道が同じだったらしいから一緒にいた、って勘違いされたのかな」
だから僕は、咄嗟に嘘をついた。
藍原の同中のやつが僕と三日月さんを河川敷で見かけた、と言っていたけれど、それはあくまで見かけただけであって、一緒に四つ葉のクローバーを探していたことまでは気づかれていないらしい。
「ほんとかよ」
「嘘だと思うなら本人に聞いてみたら」
いや、実際に聞かれて困るのは、もちろん僕だけれど。
そんな強気な発言してるけど、実際は手に汗握っていた。
でも、ここまで言わなきゃ真実味がないから。
「そっ、そんなことできないからお前に聞いてるんだろーがっ!」
顔を真っ赤に染めて、僕に突っかかる。
まるで僕は、責められている気分だ。
ほんっと、八つ当たりにも程がある。
「今答えたじゃん。それとも僕の言ったことが信じられない?」
全部、僕が何でも言うことを聞くとでも思っているのか。
そんなの、大間違いだ。
僕は、黙って言うことを聞くロボットなんかじゃない。
「茅影、お前…」
「なに?」
僕が言い返したことがそんなに驚くのか。
僕が言い返さないとでも思っていたのか。
藍原の今の表情は、まるで鳩に豆鉄砲を食らったかのようだった。