「願掛けって……」


いったって僕は、そういう類は信じないのに。

でも、この流れは断ったところで納得しなさそうだし……。

唯一、願いをするとすれば。


“少しでも明るく前向きになれますように”


これ以外、思いつかない。


「その顔は何か思いついたんだ?」

「…あー、まぁ…」


言葉を濁して返事をすると、何をお願いするの、と尋ねられる。
けれど僕は、秘密と言って言わなかった。

だって、願掛けってものは人に言ったら叶わないような気がしたから。

そしたら三日月さんは、ケチ、と言って膨れっ面をした。


なんで僕がそんなこと言われなきゃならないんだよ。


「それより写真撮らなくてよかったの?」


尋ねると、ほんとだ、と思い出したように目をまん丸にして、慌ててポケットからスマホを取り出した。

青春の写真を撮りたいって言ってるわりには、結構忘れてる三日月さん。

意外と天然なのかな。


「どうやって撮んの?」

「そうだなぁ……」


しばらく考えたあと「あっ」と何かを思いつき、僕の手を掴むから、


「ちょ、な、なに?!」


焦って、その手を振り解こうとするけれど、


「撮影ポイントを固定してるの! だから動かないで!」

と、さらにぎゅっと手を掴まれる。