お昼休み、自販機で飲み物を買った帰り、


「──好きです。俺と、付き合ってください」


なんの脈絡もなく、そんな言葉が目の前に落ちて来て、ピタリと足が止まる。


声は、すぐ近くにある中庭から聞こえてきた様子で。

このときの僕は、何を思ったのか、缶ジュースを落とさないようにギュッと握りしめて、木の影に身体を隠した。


「えっ、と……私まだこっちに来て何も知らないし、きみのことも……」

「俺、櫛谷慎(くしたにまこと)です。三日月さんの隣の三組なんだ」


櫛谷……? そういえば、サッカー部にそんな名前の人がいたような……。


「それで、転校して初日に三日月さんに一目惚れしちゃって……」


木の影から様子を伺うと、櫛谷って人は、すっごいイケメンだった。

うわ、僕と全然違う。

こんな人が告白したら誰だってOKしちゃうんじゃないのかな。


「まだ日は浅いけど、ほんとに好きなんだ! 三日月さんが嫌なら友達からでも構わない!」


なんか僕、バカみたい。なんでこんなことしてるんだろう。

どうせ丸く収まるんだろう。

やめやめ、戻ろう……。


「気持ちはすごく嬉しいんだけど……ごめんなさい!」


予想していた答えとは違った言葉が聞こえてきて、気が抜けた僕の手から缶ジュースが抜け落ちた。