「でもさ、四つ葉のクローバーって見つけたらなんか幸せな気持ちにならない?」

「……さあ」


僕は探したことないし、探したいとも思ったことがないから彼女の気持ちに同意することができなかった。


そっか、と微笑むと、風に攫われる髪の毛を耳に掬ってかけると、


「向葵くんも見つけてみたらきっと分かるよ」


僕に幸せの気持ちなんか分かるのかな。

今までの人生そのものが全部コンプレックスの塊みたいなものなのに。

幸せ、そのもののように笑う彼女は僕と対照的すぎて、


「……そんなの簡単に見つかるわけないだろ」


ひねくれた僕は、初めから消極的。

河川敷なんてかなり広いし、必ずクローバーが見つかるとも限らない。


「うん、一人だったらね」


笑って告げたあと、


「今日は向葵くんがいる。だから一人じゃなくて二人なの。二人で一緒に探せば見つかるかもしれないでしょ?」


彼女の自信と勇気は一体どこから溢れてくるんだろう。

そんな彼女が眩しく見えて、


「……何人いても同じでしょ」


僕は、いつも後ろ向きだ。

そんな僕に、そんなことないよ、と彼女は続けると、


「向葵くんが一緒に探してくれたらすごく心強いの。なんかよく分からないけど、向葵くんなら見つけてくれるんじゃないかなって思って」