体育の授業中、先生にバレないようにサッカーをサボっていると、視界にあるものが映り込んだ。

三日月さん……と、その彼女に夢中になる藍原の姿だ。


僕たちの学校は、二組合同で体育がある。

だから三日月さんたちの二組と僕たちの一組が一緒になった。

僕は体育なんて体力使うようなものは苦手だけれど、対照的な藍原は、すごく嬉しそうに鼻の下を伸ばしていた。


「……バカバカしい」


思わず、ポツリと呟いた。


「何がバカバカしいの?」


突然背後から僕が呟いたことに対して尋ねる声が聞こえて、ぎょっ、として顔を向けると、小武だった。

しまった、よりによって藍原の友達の小武に聞かれるなんて……。


「……な、なに?」


緊張のあまり声が裏返る。


「いやー、今何に対してバカバカしいって言ったのかなぁと思って」

「べ、べつになにも……」


うわ、最悪だ。よりによって、そこを聞かれてたなんて。

三日月さんたちに背を向けて、その場から立ち去ろうとすると、


「もしかして藍原のことか?」


図星をつかれて、反射的に足が止まる。


「な、なんでそう思うの?」

「ん? ああ、なんかさっきから藍原のこと見てるなぁと思って」