少しだけ溶けたアイスは、まだほのかにひんやりとしていてソーダ味が口いっぱいに広がった。

……うまい。


そもそも僕、放課後に誰かとこうしてアイスを食べることなんて初めてだ。その上、相手は可愛いと有名な転校生。

僕の苦手なグループに属する人なのに、少しだけ嬉しいような恥ずかしいような。

だからなんか、複雑だ。


「ん〜、これおいしいね!」

「え? …ああ、うん、まぁ」


咄嗟においしい、が出なかった。

……僕ってほんと、人付き合いが下手だ。


そう、思っていると、私ね、声を落とした彼女へと目線を向けると、


「誰かとアイス半分こして食べたの初めてなの」

と、嬉しそうに悲しそうに微笑んだ。


「えっ……?」


驚いていると、あー、と僕に指をさして、


「もしかして嘘だと思ったでしょ!」

「いやっ、だって…」


三日月さんならそういうこと一度や二度、なんならそれ以上あると思っていたのに。


「……一度も、ないの?」

「うん、ないよ」


告げたあと、シャクッとアイスを噛んだ。

その横顔は、どこか儚げで。


「な……」

「うん?」


僕のことを根掘り葉掘り聞いていた三日月さんに、仕返しでもしようかと思ったけれど、


「…あ、いや、なにも」


なんで、とは聞けなかった。