「なっ、なんだよ」

「ううん、なんでもない」


首を振ったあと、それより、と続けると、


「向葵くんが急かすから早速写真撮ろっか」


かばんの中からスマホを取り出した。


結局僕は、からかわれる存在らしい。


アイスにスマホを向けて、これも違うあれも違うと何回も角度を変えて、どうやって撮ろうかなぁ、と考え込んだあと、


「向葵くん何かいい方法ある?」

「……え、僕?」


アイスを写真に収めるなんてこと考えたこともなかったからな。

でも、彼女の言う“青春を写真に切り取る”なら、


「……二つのアイスを斜めにくっつけて空にかざす……とか?」


それなら青春らしく見えるんじゃないのかな、そう思ったけれど、三日月さんは僕を見つめたままポカンとする。


やっぱり、変だったのかな……

心配になって、前言撤回しようとすると、


「それ、いいねっ!」


ぱあっと笑顔になったあと、


「ソーダアイスの色と空の色がいいコントラストになるし、陽の光が当たるとさらに良さそうだし、向葵くんナイスアイデア!」


饒舌になる口調に僕は、「え、あ…」と言葉に詰まらせる。


「ほら、向葵くんもアイス空にかざして」

「え? …ああ、うん」


言われるがままアイスをそらにかざすと、おもむろに、トンッとアイスがぶつかった。