「自分のこと悪く言ったらダメだよ」

「だってほんとのことじゃん」


みんな言ってる。自分でも、そう思ってる。

だから、素直に自分で言った方が傷は浅いはずで。


「私、そんなこと思ってないよ」

「なんで」


被せ気味に尋ねると、「なんでって……」言葉に詰まったあと、ゆっくりと口を開いて、


「ほんとに向葵くんが暗いだなんて思ってないもん。それに存在だって薄くないし話せば明るいし存在もちゃんとあるし、おまけに口が悪いもん」


まくし立てられるように告げられた言葉のほとんどは頭に入っていない気がしたけれど、


「……僕、口悪くないから」


そこだけが妙に際立って言われたようで、咄嗟に言い返す。


そういえば昨日も同じこと言われた。

僕のどこが、口が悪いんだ。


「なんで。案外言い返すじゃん」

「……そんなことないし」

「え、だって私には、最初から敵意剥き出しだったよ? まるで猫が毛を逆立てて威嚇してるみたいに」


なんだよ、その例え。

そういうのがいちいち、


「余計だって言ってんだろ」


言葉に反応して言い返すと、ほら、と指をさされる。


「向葵くんのそういうところ」


まるで僕のことを理解されているようで、癪に触る。