初めからそうだったけれど、彼女は人の目を真っ直ぐ見て話す。

だから僕は、いつもその視線に負けて自分が先に逸らして、


「この前の櫛谷だっけ? …あと、藍原とかに言えば協力してくれるんじゃない」


可愛げのないことを言ってしまう。

だって、どう見ても彼女はそっち側の人間だ。


僕が望んでも手に入らなかったものを、彼女は最初から手に入れてる。
苦労せずに当然のように持っている。


だから少し、苛立った。

──これは、間違いなく嫉妬だ。


「どうして櫛谷くんたちの名前が出るの?」

「告白されてたじゃん」


なにも影の薄い目立たない僕を選ばなくても、


「あの二人なら喜んで協力してくれるんじゃないの」


それなのに、キラキラした人たちとは対照的な僕を、なぜ、選んだのか分からない。


「確かに櫛谷くんたちなら、一緒に楽しんでくれると思う」


ほら、自分でも分かってんじゃん。


「だったら」


「でも」僕の言葉に被せたあと、髪の毛を片方の耳にかけて、


「向葵くんと一緒に青春してみたいなって思ったの」

と、告げられた。


まるでそれは、僕を肯定しているような言葉で。

それが少しでも嬉しいと感じてしまった僕。


でも、そんなはずないと自分の心を否定するように、


「暗くて目立たないやつなのに?」