「それにしても教室やけに静かだな。何かあったのか?」

「…多分、転校生のところかと…」

「ああ、なるほど」


苦笑いしたあと、そういえば、と何かを思い出したかのように呟くと、


「ここに来る途中、確かに廊下が騒がしかったもんなぁ」

「…そう、なんですか」

「茅影は行かなくていいのか?」


むしろ僕が転校生を見に行けば、きっと周りが騒ぎ立てる。

そして最後はこう言われるんだ。

“お前には明るい場所なんて似合わない”と。


「…僕は、大丈夫です」


目線を少し下げると、そうかそうか、と先生が笑って、


「茅影は真面目で勉強熱心だから先生も期待はしてるけど、あまり無理をしすぎるなよ?」


予想していなかった言葉が告げられて、え、と困惑して目線を戻す。


「なんだ。先生何か変なこと言ったか?」

「…あ、いえなにも…」


ハッとして、慌てて口をつぐんだ。


そしたら先生は何事もなかったかのように、


「これ、助かったよ。ありがとな」


と、ポンッと僕の肩を軽く叩いて教室を出て行った。