重たい足取りで向かった裏門には、壁に背を預けてスマホ画面を凝視していた。

まだ、僕には気づいていないらしい。


「おーい」


声をかけるけれど、無反応で。

かといって、肩を叩いて、待った?なんて言えるような間柄ではない。

むしろまだ、三日月さんを警戒している。

……いや、三日月さんの周りを、だ。


可愛い転校生として知られている彼女のことを、どこで誰が見ているか分からないからだ。

藍原のように本気で好きなやつがまだ他にもいるかもしれない。

そいつがここを見張っていたら、僕はまた窮地に立たされるはめになる。


……て、やめやめ。どんどん考えが卑屈になってんじゃん。こんなんだから僕は、影が薄いとか暗いとか言われるんだろ。

と、頭を振ってかき消した。


すると、おもむろに顔を上げた彼女が、あ、と僕を見て声をもらす。


「いつ、来たの?」


なんて、ひどい質問だと思った。

まるで僕の存在に気づかなかった、とでも言いたげな言葉で。


「……今だけど」


不満に思いながら声を落とすと、そっか、と笑ってスマホをかばんの中にしまった。

“ごめん、気づかなかった”

なんて言われなかっただけマシだけど。