だって、今僕は対等に話せていた気がしたから。


「ほんと、悪かったな」

「え? …あー、いやべつに…」


小武が悪いわけじゃないからそんなに謝られても困る。

目線を下げていると、


「あいつさ、三日月さんのことマジらしくて。だから、昨日茅影が呼び出されたことに対しておもしろくなかったんだと思う」


ああ、やっぱり。

ほら、結局僕は、何も悪くない。
ただ理不尽に苛立ちをぶつけられていただけなんだ。


「まあ俺も茅影が呼び出されたときは驚いたけどさぁ、三日月さん、見る目あるのかもな」


小武の言葉に、え、と困惑した声をもらしたあと、目線を上げると、


「ん? …ああ、こっちの話!」


ニカッと笑って言葉をはぐらかされた。


「ふーん……」


でも、まあいっか。どうせ、僕には関係のないことだし。


「じゃあ、ほんとさっきは悪いな!」


そう告げると、藍原のあとを追いかけた。


嵐のようにやって来て、嵐のように去ってゆく。

とんだ、いい迷惑だ。


窓の外へ目を向けて、ふう、と呼吸を整えたあと、文庫本を開こうとすると。

──キーンコーンカーンコーン

授業が始まると知らせる予鈴が鳴った。


休み時間に続きを読もうと決めていたのに、全然読めなかった。


「……最悪」


深いため息をついたあと、仕方なく文庫本を閉じた──。