嫉妬、苛立ちの感情が交錯しているような瞳で、僕を見下ろす。

その目を今まで何度見てきただろう。

自分が優位に立てば、僕が従うとでも思っているのか。

……冗談じゃない。なんで僕が、藍原に従わないとならないんだ。


「話せって言われてもほんとに何もなかったから話すことないんだけど」


口早にそう告げると、


「答えたんだから早くそれ返してよ」


ジッと藍原を睨みつけた。

そしたら、なんだよ、と文句を言われる。


「……べつに」


これ以上、話すこともない。

どうせ、態度と言葉でこの場を支配したいんだろ。僕は、そんなのに屈しない。


そんな僕に腹を立てた藍原は、


「なんっだよ、お前…!」


文庫本を持った手を振りかざす。


「──待て待て、藍原」


その手を背後からパシッと掴んだのは、小武だった。


驚いた表情を浮かべたあと、顔を逸らして顔を確認すると、


「なんで止めるんだよ、小武」

「お前が今にもそれ投げそうにしてたからだろ」

「だからって止めんなよ」


不満そうに文句を告げる藍原を、まあまあ、となだめながら、文庫本を取り上げると、


「ほら、これ返すよ」


僕の机にそっと置いた。


これこそまさしく、目が点になる、だ。