「高校生活なんてたった三年なんだよ? それなのに向葵くんは、自分の殻に閉じこもったままでほんとにいいの?」


ブレることなく真っ直ぐ見据える瞳は、僕のものとは全然違う。

そんなの聞かれなくたった答えなんか決まってる。


「いいに決まってんだろ」


僕は、ただひっそりと隅っこで三年間終えることができればそれでいい。

それ以上は、何も望んでない。

──僕が何かを望んだって、どうせ何も手に入らない。


「そっか」落ちてきた声は、あまりにも力なくて。


「向葵くんが今のままの方がいいって言うのは分かった」


何度告げても僕のことを茅影くんと呼ばない彼女に、さすがの僕も言い返す力さえなくなった。


「でもさ、一つだけいいかな?」

「……なに」


僕を見て、悲しそうに笑ったあと、


「諦める前に、私と一緒に青春してみようよ」


この期に及んで、まだその話を掘り返すのかよ。


苛立ちと呆れが入り混じる。


「……それは断ったじゃん」

「うん。でも、やっぱり私どうしても諦められないの」

「だからってなんで、そこまで」


僕に構うんだよ。

地味で目立たない僕のことを、もう、


「……放っておいてくれよ…!」

「放っておかない!」