「……そうだよ、きみの言う通りだ。茅影なんて、好きでこんな名前になったわけじゃない。僕はずっと前から自分の名前が嫌いだった。きみの言う通り、今まで影が薄いって散々バカにされてきた」


なんで僕は、こんな名前なんだろうって子どもの頃から何度も何度も考えた。

けれど、考えたところで答えなんて見えてくるはずなくて。

だったら──、


「あいつらの望み通り、影の薄い目立たないやつになってやろうと思った」


そうすれば自分の世界だけは、守れると思ったんだ。


「でも、きみが現れたせいで、さらに僕への風当たりは強まったんだ」


睨みつけように告げると、え、と困惑した声をもらした彼女。


「きみが……」ぎゅっと、拳をさらに握りしめる。爪が皮膚に食い込んでいく。

けれど、そんなことさえも気にならなくて。


「きみが、みんなの前で僕に用があるなんて言うからだ。僕の学校生活はこれからめちゃくちゃになる」


僕のクラスで藍原が一番三日月さんに好意を寄せていた。

だからきっと、僕を目の敵にする。

そんな光景が容易に想像できる。


「みんなの前で呼び出したのは、申し訳なかったと思ってる」


ポツリと呟くと、でもね、と続けて、