場所を移動した僕たちは、人目のつかない体育館裏にやって来た。

周りは隠れる物陰もないから、あとを付けられる心配がないからだ。


「…で、なに」


一定の距離を保って、冷たく尋ねるとクスクス笑った彼女は、


「ほんとは分かってるでしょ」

「…は?」

「この前の話の続き」


その言葉を聞いて、瞬時に理解できた僕は、心底嫌気が差した。


この前は僕が逃げてそこで話は途絶えた。

けれど、あれは確かに終わったものであって掘り返されたくはない話題だ。

だから、


「あれはもう終わっただろ」


そっぽを向いて、答えると、んーん、と首を振った彼女。


「私、まだ諦めてないから!」

「なに、言って…」

「だってこの前は向葵くんが言い逃げしたから」


いやまあ、確かにその通りだけれど。

ていうかその前に、


「……その呼び方やめろよ」

「なんで?」

「さっきみたいに名字で呼んでよ」


みんなに聞かれたら結局は、僕が責められるんだ。理不尽に嫉妬を受けるはめになる。

そんなことさえも気づかずに自分がやりたいように突き進む彼女が、なぜ、モテるのかさっぱり分からない。

見た目は確かに可愛い。

けれど、ほんとにそれだけだ。

僕からすれば、彼女の何がいいのか分からない。