僕は、そんなことなど頭から吹っ飛んで、三日月さんのことばかり考えてしまっていた。
「なーんだ」クスッと笑ったあと、僕の手にそうっと触れた三日月さん。
「私のことを嫌なわけじゃないんだよね?」
「う、うん…」
「それならいいの」
僕の右手を肩から下ろすと、両手で僕の手を包み込むと微笑んだ。
けれど、その表情はどこか儚げで、寂しげで。
「私」おもむろに、僕の手を自分の頬へと添えると、目を閉じて。
「……生きてて、ほんとによかった」
瞼を開いた三日月さんは、瞳を潤ませて口元を緩めた。
泣きそうなように、笑ったんだ。
「ほんとに、よかった……」
潮風が吹いて、三日月さんの髪の毛を攫う。
波が僕たちの足を打ちつける音が小さく響いて、あたり一面がキラキラして見えて。
泣いていない、のに泣いているように見えて、思わず彼女の目元に手を伸ばしかけた。