ああ、もうほんっと…


「……さいっあく」


これからどうするんだよ。

家までびしょ濡れのまま帰るのか?
それこそ目立ってしょうがない。

僕はどこまでもかっこ悪い。
情けないなぁ、ほんとに。


「大丈夫? 向葵くん」


僕に向かって手を差し伸べる。

けれど、三日月さんの表情は笑いを堪えているようで。


その手を握り返して、立ち上がると、ズボンはびっしょりと濡れていた。もちろんパンツだって。


「……全然、大丈夫じゃないし」


なんで笑ってるんだよ。

ていうか、これそもそも、


「三日月さんのせいじゃん」

「えー、私?」

「そうだよ」


かっこ悪くて、そっぽを向いたまま身動き一つできずにいると。


「だって向葵くんが手を合わせてくれなかったからさぁ」


確かに、彼女が全て悪いわけではない。

僕が勝手に砂に足をとられただけ、だ。


「だからって、僕が…」


なんか責められてるのは納得てきない気もするけれど。


「じゃあ私と手を合わせるのがそんなに嫌だったってこと?」


そう告げられて「は?」声をもらしながら、顔を向けると、なんの濁りもないその綺麗な瞳で僕を真っ直ぐ見据えていた。


「いや、べつにそういうわけじゃないけど…」

「けど、なに?」


僕はたった今怒っているはずなのに。

僕を見つめる彼女は、綺麗でどきっと胸が跳ねる。