海で裸足になるなんて、何年振りだ。

水分を含んだ土を踏む感触が妙に慣れなくて、うわっ、と声をあげた。

僕より先に波に足を踏み入れた彼女は、んー、と両手を広げる。


「ちょっと温かいけど、気持ちいいね」


つられて、僕も足を踏み入れると、陽差しで温まった海水はお湯になっているようで。
気持ちいいとは程遠かったけれど、三日月さんが笑ってるからいいや。

海水は綺麗で透けているからか、光が反射してキラキラ見える。

こんなのいつ振りだろう。
誰かと、海に来るなんて今までの僕ならあり得ないことなのに。

三日月さんが来てから、僕の人生は180度変わった気がする。確実に。


──パシャっ


「うわっ!」


飛んできた海水を拭って、チラッと視線を向ければ、ふふふふっ、と笑いながら僕の方へ指をさす彼女の姿が視界に映り込んで。


「……なにしてんの」


ふてくされながら、思わず呟くと。


「なに、って水かけっこ。海に来たなら定番でしょ?」


言って、また海水へと手をつけると僕に向かって掬ったそれを飛ばす。
弾けた水は、一秒にも満たないわずかの時間だけ空中に投げ出されて、キラッと光ったあと、また海へと落ちる。

その瞬間、まるで青春そのものだ──そう思った僕。

おもむろに海水へと手をつけると、パシャっ、また僕へと水が降り注ぐ。


「ちょ、なに、やって…」