三日月さんが学校へ来るようになって、一週間。藍原が前以上に彼女のクラスへ会いに行っているらしい。


「ねぇ、ほんとに海なんて来て大丈夫なの? まだ病み上がりなんだし、さ…」


今日からテスト期間中で、学校がお昼までだった僕たちは、少しだけ足を伸ばして海までやって来た。


「もう〜、またそれ?」


潮風が吹いて、彼女の髪の毛をふわりと攫う。その髪を掬って耳にかけながら、僕の方へ視線を向けると、

「向葵くんてば心配性だなぁ」

クスッと微笑んだ。


……僕が心配性って。

いや、それよりも、


「三日月さんが気にしなさすぎでしょ」


思わずボソッと呟くと、だからー、と呆れたように僕へと向き直ると、


「何度も言ってるけど私、ほんとに大丈夫だから」

「いやでも、もし何かあったら…」


僕はそれが気がかりで、まだ海に行くのは早いんじゃないかと止めたんだけれど。
彼女は、頑なにここへ来ることを諦めなかった。


「とにかく、向葵くんより自分のことは自分が一番分かってるから心配しないで」

「…分かった」


そこまで言われてしまえば、それ以上何も言うことはできなかった。


「それよりさ、もう少し波の近くに行こうよ!」


海岸へと指をさす彼女に、えー、と戸惑っていると、おもむろに僕の手を掴んで。


「いいから早く!」


急ぎ足で向かおうとするから、僕はたまらず心配になる。