僕は、焦った。こんな炎天下の中、退院したばかりの彼女を立ちっぱなしにさせたわけだから。
また、何かあったらどうしようって怖くなってそばに寄った。


「頭が…割れそう…」


こめかみを抑えながら、苦しそうに顔を歪ませる。

身体に異変が起きたのだろうか。
病気が再発しちゃったのだろうか。
このまま消えてしまうんじゃないか。

またあの恐怖が襲ってくるのかと思うと、たまらなく怖くなった僕は、病院へ走ろうと足を踏み出した。
「待って」腕を掴まれて、え、と困惑して三日月さんを見つめると、


「……行かないで」


僕の腕をぎゅっと握りしめる三日月さんは、こめかみを抑えていた手を離すと、真っ直ぐ僕を見据えて。


「……行かないで」

「でも」

「お願い……向葵くん……」


他人行儀なんかじゃなくて、懐かしさを思わせるような呼び方に。僕は、小さく緊張する。

これは、僕が知っている三日月さんなのか。
それともそうじゃないのか。
僕は、しばらく困惑したまま彼女を見つめた。

三日月さんと繋がれた手から伝わる熱が、ドクドクと逆流しているようで。