「三日月さんが忘れてしまったとしても、僕が覚えているからって。大丈夫だよって」


──僕が、彼女と約束したんだ。


「だから、僕と生きてほしいって、三日月さんにそう言ったんだ」


失いたくなかったから。
──彼女を。
この先もずっとそばにいたいと思った。
──三日月さんと。


「そしたら、三日月さんは告白みたいって笑って」

「……告白?」


困惑したように、真っ直ぐ僕を見据えたあと、急にこめかみを抑えて顔を歪めた。

一ヶ月半月ほど前のことを思い出すと、さすがの僕も恥ずかしくなる。
生まれて初めて僕は、人を好きになり自分から気持ちを伝えたいと思ったんだから。


「あのとき僕は言えなくて、代わりに、三日月さんの手術が終わったあとに僕の気持ちぜんぶ言うから…って、約束したんだ」


ただ、勇気がなくて言えなかっただけなのかもしれない。


「……やく、そく……」


小さな声で呟いたあと、目をぎゅっと閉じてこめかみあたりを抑えた三日月さん。


「三日月さん、どこか痛いの?」

「頭が…」

「頭がなに? 痛い?!」