病院までの道のりを僕はノンストップで全力で走った。
そのせいで、病院に着いた頃には息が上がり、膝に手をついて、はあはあ、と肩で息を整える。
九月の陽差しは、想像以上に強すぎて僕の額からは汗が滲んで、ポタッと一粒地面へと落ちる。
「──あら?」
ふいに、聞こえた声に顔をあげると。僕の方を真っ直ぐ見つめて立ち止まる三日月さんと、その傍らで彼女を支える母親らしき姿が少し離れたところで見えた。
「もしかしてひまりのお友達?」
「えっ、あっ…」
突然声をかけられて、戸惑った僕は言葉に詰まって口ごもる。
三日月さんは、何も言わずに僕を見つめたまま母親に寄り添うように後ろの方へ隠れているようで。
僕を警戒しているように見えた。
僕のこと忘れちゃったのかな。
嫌な考えが頭をよぎった。けれど、僕はそれを振り切るように、はい、と頷いたあと、
「……三日月さんの友人…です」
震える声で言葉を張り上げると、そう、と頬を緩ませた母親は、三日月さんに何かを言った。
そして、僕の方を向いて。
「おばさんは車の方で待ってるから、ひまりのことお願いね」
「は、はいっ…!」
僕に言っているのだと気づいて、上擦った声で返事を返した。
そしたら、三日月さんの母親は彼女の背中をポンッと軽く押してから、そばを離れた。