活字ばっか読んでて何が悪いんだよ。おまえに何か迷惑でもかけたのかよ。

……心の中で、文句を吐き捨てる。


「そんなことより早く三日月さんとこ行こうぜ!」


おー、と軽く返事を返したあと、


「じゃあな、茅影」


俺の前からあっさりいなくなるクラスメイト。


足音だけが虚しく遠ざかる。


“そんなことより”って、どういうことだよ。

……どうせ僕のこと、つまらなくて暗いやつだとでも思ってるんだろうな。


つーか、文庫本読んで何が悪いんだよ。

転校生が可愛い女の子だからって鼻の下伸ばしてヘラヘラ笑ってる方がよっぽどダサいし。


僕は、これが好きで読んでいるんだ。
僕は、一人が好きだから一人でいるんだ。

それを“暗い”とか“そんなやつ”で片付けてほしくなんかない。

名前が茅影だからって影が薄いとか、見た目だけで判断するのはやめてほしい。


そんな僕は、ずっと昔から自分の名前が嫌いだ。

なんでよりにもよって、“茅影”なんだよ……。