「向葵くん……」
腕の中で涙を流したまま硬直した三日月さんは、遠慮気味に僕の名前を呼ぶ。
いつも明るかった彼女のものとは思えないほど、弱々しくて。
「今のって告白?」
「は?」
突然告げられた言葉は、あまりにも脈絡がなく気の抜けた声がもれる。
「いやだってね」言いかけた彼女の声に、鼓動を揺らしながら腕を緩めると、
「僕と一緒に生きてほしい、ってまるで告白みたいだなぁって思って」
つい数秒ほど前に僕が言った言葉を、彼女が淡々と告げるから、僕はたまらず恥ずかしくなって。
「いやっ、べつにそれは……」
みるみるうちに弱々しくなる普段の僕へと切り替わる。
「それは?」
緩められた腕の中から真っ直ぐ僕を見据える瞳とぶつかって、思わず息を飲む。
この空気に飲まれて言った言葉じゃないことだって分かってる。
僕が思った言葉が、自然と口からもれたわけで。
「だから……」
僕の言葉を待つきみは、いつのまにか涙が止まっていて。
それは、の先に続く言葉は──
「……やっぱり、やめた」
羞恥心に駆られた僕は、それを悟られないように彼女を引き寄せて僕の顔が見えないようにする。
「向葵くん……?」
困惑したような声色で僕の名前を呼ぶ。
今まで、こういう気持ちになったことなんてなかったのに。
まさか、そんなはずはない。
いやでも、もしかして。
そんな感情が交錯していた。