三日月さんが、小さく息を飲む気配がした。


どうしようもなく怖かった。三日月さんがいない未来なんて考えるのが。もう会えないんじゃないかと想像してしまうのが。

たまらなく怖くなる。


「頼むから」

考えるより先にこぼれていた声のあと、両肩に置いていた手を彼女の背中へと回した。


「三日月さんに明日もその先も、ずっとずっとその先も生きていてほしい」


あいかわらず情けなくて、掠れた声が溢れて。


「僕と一緒に生きてほしい」


背中へと回した両腕が震えていた。僕は、怖かった。今、彼女を引き止めなければほんとにこの世界からいなくなってしまうんじゃないかと、怖くて。
強く力を込めた両腕。

彼女は、今までどんな気持ちで、想いで、僕に話しかけてくれたんだろう。

『だから、一緒に青春してみない?』

僕がどんなに冷たい態度をとっても、きみは、いつも笑顔で太陽のように眩しかった。
きみはいつも真っ直ぐすぎて、それを僕は嫉妬してイラつくことだってあった。
けれど、きみはいつだって僕と対等に話しかけてくれた。
周りのやつみたいにバカにしなかったし、笑いもしなかったし。

最初は、面倒くさいって思ったしうざいなって思った。
でも、心のどこかで救われていた部分はあって。