「僕が覚えてる!」
真っ直ぐ彼女を見据えると、揺れた瞳とぶつかった。
たまらず、ぎゅっと唇を噛み締めたあと。
「僕が三日月さんのこと忘れないから。絶対に」
「向葵、くん……」
「もしも仮に三日月さんが僕のことを忘れてしまったとしても、僕がちゃんと覚えてるから」
──忘れたりしない。絶対に。
「……ほんと、に?」
「うん」
ちゃんと、約束する。
それに、
「もしも仮にそんなことになったとしたら今度は僕が一番最初に三日月さんに声をかけるよ」
彼女は、涙を流しながら驚いたように、え、と声をもらす。
僕は、少しだけ表情を緩ませると、
「三日月さんが僕にしてくれたように何度だって声をかけるから」
──しぶとかった三日月さんのように。
諦めの悪い三日月さんのように。
「病気が治ったら、一緒にやりたかったことぜんぶしよう」
「ぜんぶ……?」
「うん、ぜんぶ。花火大会行ったり、海で水かけしたり。三日月さんがやり残したことぜんぶ一緒にしよう」
今を生きて、そして未来へ目を向けて。
きみが思い描いた「青春」を追いかけていこう。
「だから」声は、考えるより先にこぼれていた。顔を俯いて彼女の肩に置いていた手のひらに、ぎゅっと力を入れる。
「ちゃんと病気を治してほしい」
絞り出すように、声を落とした。
僕の声は、少しだけ掠れているようで。