言葉を短く切ったあと、それにね、と続けると、
「時々、思ったの。もしかしたら病気が治ってるんじゃないかって。だって、すごく調子がよかったの。頭の痛みだってないし身体のだるさだってなかったし、私ほんとに病気なのかな?って」
明るい声色話す彼女からは、全然病気なんて感じられなくて。
「でもね、調子乗るとすぐ体調崩して倒れたり、頭が痛くなったりするの。それに食欲だって全然ないし」
急速に手繰り寄せられた記憶の点と点が、ようやく繋がった。
それは、お昼休みのベンチでの出来事。
彼女は、小さなパン一つだった。
そしてそのとき、自分は少食だから、と答えた三日月さん。
僕は、それを信じて疑わなかった。
けれど、その小さなパン一つを食べるのがすごく遅かったことを思い出す。
それに、倒れて保健室に行ったことも。
「体調が悪くなると、あーやっぱり私は病気なんだなぁって嫌でも自覚させられちゃうの」
悲しそうに眉を下げて、笑った。
彼女が一人で抱えていたものを僕は、何も気づいてあげられなかった。
悔しくて、悲しくてたまらなかった。
「……ごめん」
膝の上に置いていた手のひらを、思わず握りしめた。
「どうして向葵くんが謝るの?」
「だって、何も気づいてあげられなかった」
いつも笑顔だったきみが、その裏側で何を考え、思っていたのか僕は見ようとも気づこうともしなかった。