三日月さんが倒れてから、しばらく経つけれど、やっぱり学校は休んだままだった。

さすがのみんなも心配して、特に藍原なんてこのところ元気がなかった。


──ピコンッ

昼休み、中庭で弁当を食べているとベンチに置きっぱなしのスマホが音を立てる。
行儀が悪いと思ったけれど、箸を加えたままスマホを手に取った。


「えっ……」


相手は、三日月さんからで。

僕は咥えている箸を掴むと、弁当箱の上に置いた。


【 向葵くん、この前はごめんなさい。
やっと心が決まったので、ぜんぶ話します。
だから放課後、病院の五階の三〇九号室に
来てください。待ってます。】


……ぜんぶ、話す。

文面を見て、嫌な動悸が加速した。

怖かった。逃げたかった。

けれど、三日月さんは勇気を出してくれたんだ。僕と、向き合おうとしてくれたんだ。

だから僕が今ここで逃げたらダメだ。


【分かった】


打っては消して、打っては消してを繰り返しで、たった四文字を打つのにかなり時間がかかった。


それに既読が付いた頃、昼休みの終わりの合図のチャイムが鳴る。