それを三日月さんは、僕にずっと隠してた。
そしてさっきも隠そうとしていた。
一体、何を……?
「三日月さん………」
僕は、すごく怖かった。
このまま三日月さんと話せなくなってしまうんじゃないかと。
怖くて、手が震えた。
抱えた身体の軽さも、少し低い体温も、苦しそうな息遣いも、全てが鮮明に残っている。
それからしばらくして先生が出てきた。僕を見て、軽く微笑んだ。
「あのっ、三日月さんは……」
「大丈夫ですよ」
落ち着いた声を聞いて、ホッと安堵する。
一気に身体の力が抜けた。
「今は、薬も効いてぐっすりと眠ってます」
「そう、ですか……」
……よかった。
さっきは、すごい苦しそうだったもんな。
「きみが彼女の近くにいたのかな?」
「あ、はい、たまたま偶然ですが…」
そうかそうか、軽く何度か頷いたあと、
「きみが気づいてくれてよかった。ほんとにありがとう」
僕の肩をポンッと叩くと、先生は慌ただしくどこかへ歩いて行った。
けれど、僕はお礼なんて言われる筋合いはない。
だって、嫌がる彼女を僕が引き留めたんだから。そして、急に顔を歪めて苦しそうにした。
だから、僕が原因なのかもしれない。
そんな僕は、何もできず、
ただただ、遠さがる後ろ姿を見つめることしかできなかったんだ──。